投票率の低下は「ユーザーの減少」だ

2004年11月02日

「市民社会と地域自治」という研究会で、議会のあり方について議論してきました。
今回、その研究会でアイディア集をまとめたいということで、
私も「ガバナンス時代の議会のあり方」の項で「選挙」について書いてみました。

「投票率の低下」という現象は、商売に例えれば「お客さんの減少」に他なりません。
「投票に行こう!」と叫ぶ前に、商品そのものをお客さんの役に立つものに変えるべきですが、
実は選挙時の選択肢不足・情報不足によって「買いたい商品が見つからない」という
商売以前の問題を抱えているのが政治業界の現状です。

以下、私の原稿です。
他の方の原稿と見比べ、皆様のコメントも参考にしながら加筆修正します。

ガバナンスの「道具」としての、議会と選挙


議会を事務事業評価にかけたら、どうなるだろうか?
ガバナンスの道具=権力や税金の使い方をコントロールする仕組みとしての議会は、
税金を効率よく使って事業を遂行しているだろうか?
その事業は市民のニーズを満たし、かつ時代に適合しているだろうか?

投票率の低下は、端的に言えば議会という事業の「ユーザーの減少」に他ならない。
いたずらに「投票に行こう」と叫ぶ前に、議会という事業そのものを見つめ直し、
ガバナンスの道具としての有効性を高めてゆくことが先決だろう。
議会制度のあり方や、議員とその政策形成のあり方については別項に譲るとして、
ここでは、議会をガバナンスの道具として機能させるための「選挙」について考えたい。

現状の選挙における最大の問題点は、「選べない」ということに尽きるだろう。
選ぶための情報が少ない場合と、選択肢が少ない場合の2通りが考えられるが、
「誰に投票しても一緒」「投票したい候補者がいない」となれば選挙から足も遠のく。

選択肢を増やす理想的な方法としては、クォータ制が考えられる。
議員の一定割合以上が女性でなければならない等、何らかのクォータ制をとる国は多い。
政党や会派が一定割合の女性候補や若い候補を擁立することを自らに義務付ければ、
制度改正をせずとも擬似クォータ制を実現して選択の幅を拡げることができる。
老若男女がバランスよく議会に参加することは、民主的なガバナンスの第一歩でもある。
すでに好例があるように、女性や若者を議会に送り出す市民運動も有効な手段と言える。

議員を選ぶための判断材料としては、最近流行のマニフェストがあるが、
地方議会は国会と異なり大統領制のため、議員が掲げるマニフェストには実効性がない。
だからと言って抽象的・総花的なスローガンを掲げても判断材料にならないので、
「価値観マップ」または「優先順位リスト」のようなものはどうだろうか。
何に賛成して何に反対するのか、あるいは経済発展と環境保護のどちらを重視するのか、
候補者の価値観や優先順位を分かり易く表示できれば、意味のある判断材料になる。

各候補の比較情報は、第三者としての市民・NPOセクターが力を入れるべき点だ。
「議員の通信簿」や「落選運動」のようなネガティブ情報のリスト化でも良いし、
各候補の本会議質問要旨を並べるだけでも、選挙公報よりよほど嘘の無い情報になる。
また、各候補(あるいは政党・会派)が何に賛成して何に反対したかの賛否一覧も、
最重要の判断材料でありながら、選挙前にまとめて公表されることはない。

冒頭に書いたような、議会の事業評価を行うことも、市民・NPOセクターなら可能だ。
当局の無駄な予算を修正して何億円削ったのか、国に意見書を何本送ったのか。
市民の請願を何件採択したのか、議員提案条例を何本提出して成立させたのか。
情報公開や議会改革の進み具合と併せて、全国の地方議会を比較しても面白い。

携帯電話や自宅のパソコンから投票できるという次世代電子投票システムだけでなく、
判断材料となるべき候補者情報や自治体の現況、市民団体の主張や各種の比較記事に、
いつでもアクセスできるような「ユビキタス選挙」がひとつの理想である。
そのようなインターネット選挙を解禁するためには、公職選挙法の改正も必要になる。

もちろん、4年に1度の選挙だけで市民が議会をコントロールすることには限界があり、
時には住民投票やリコールなどで議会を牽制してゆく必要は残るだろう。
議会の決定に対して市民側から再議を請求できる仕組みができれば面白いし、
全議案にパブリックコメントを募集すれば議会はもっと制御可能になる。
しかし、まずは選挙において多様な選択肢と適切な情報さえ供給されれば、
民意に近い議会構成が実現し、議会は有力なガバナンスの道具として復活するはずだ。

「市民社会と地域自治」というテーマに合わせ、市民側の取り組みを中心に書いたが、
現状の議会は市民・NPOセクターからあまり相手にされていないことも事実である。
自治基本条例や、各種の市民参画制度を備えた役所と市民が直接やり取りし、
議会の頭越しに実質的な政策を決めるケースは、今後増えてゆくことが予想される。
議員側も「日本は議会制民主主義の国で、地方議会はガバナンスに必要不可欠な装置だ」
という思考停止状態から脱し、議会の現実を直視することから始めなければならない。
そして、議会をガバナンスの道具としてリニューアルし、磨き続けることが必要である。

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コメント

  1. kutinasi1
    2004年11月04日 17:13

    こんにちは

    投票率の低下でよく言われることですが、私の場合もやっぱ政治不信です。

    政治家は普通の市民感覚の人と大分ずれたお方のようです。

    橋本元首相 菅 両氏に代表されます。後はぞろぞろですね。

    仮に投票率が上がっても 自民党 民主党 いまのところいずれかの党でしょう。

    上がらなくとも どちらかです。

    ただ政治を変えるには 民主党が政権を獲って自民党を早く下野するしかない。この点で全国的にコンセンサスが出来てきている気がします。

    民主党に期待するとしても 改革のパワーなんて感じられません。

    現時点で投票率を云々しても どうなるものでない気がします。

    選ぶ物があると言うことは二つ以上良いものがあってこそ 投票率が上がると思っています。

  2. kutinasi1
    2004年11月04日 17:36

    地方選挙の場合の投票率は高低の問題でない気がします。議員の顔が見ないのが原因だとおもいます。

    あなたに 今コメントしているのもブログで拝見したからです。一生懸命に仕事をして それをアピールすることです。

    私は新潟で住んだ居ます。地方議員から国政に進むにやさしいところです。この県の国会議員のなり方をみると面白いですよ。

    参考になると思いませんが 投票率の問題でないこです。

    議員が議員であれば 評価されて当選します。いい人が大勢いれば投票率は自ら上がるでしょう。

  3. いさか
    2004年11月04日 23:56

    コメントありがとうございます。
    ご指摘のとおり、「良い商品」があり、その商品の情報がきちんと「見える」環境があれば、
    自ずからお客さんは増えてくるのだと思います。






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